環境に優しい再生可能エネルギーとして急速に普及してきた太陽光発電設備。
しかし設置場所や管理が不十分だと、災害リスクやトラブルのリスクも生じます。
富山県南砺市では、2024年9月に県外業者と住民の間で設備倒壊によるトラブルが発生したことをきっかけに、県内自治体で初となる太陽光発電設備の規制条例の制定に踏み出しました。
当記事では、その背景と新条例の内容、国の規制との違い、地域への影響などについて深掘りします。
南砺市が太陽光発電を規制する背景とは?
南砺市では、2024年9月、野立て型太陽光発電設備の鉄柱5本が強風で倒壊・傾斜し、住民から「パネルが飛んできて危険」と行政対応を求められる事態に発展しました。
設置業者は国の設置基準は満たしていると主張したものの、住民との合意には至らず、問題が未解決なまま残りました。
このトラブルを契機に、南砺市は地域住民の安全と自然環境の保全を目的とし、条例による規制を進めることを決定しました。

条例の具体的内容と施行予定日
南砺市の「太陽光発電設備の設置の規制等に関する条例」は、令和7年8月1日に施行されます。
主な内容は下記の通りです。
・対象施設:野立ての太陽光発電設備(屋根設置は除外)で、発電出力10kW以上、事業区域面積1,000㎡超、地形高低差10m超に該当するもの
・禁止区域の設定:砂防指定地、文化財区域、保安林、1種農地、急傾斜地、土砂災害警戒区域等への設置を禁止
・手続き義務:事業者は地域住民への説明と同意取得、市長への許可申請が必要。住民とは協定を結ぶことが義務化
・違反時の措置:許可の取り消し、立入調査、勧告・措置命令、罰則などが適用可能
・経過措置:条例施行前に着工・認定された事業には適用除外。ただし譲渡や計画変更時は手続きが必要
国の規制との違いと自治体の動き
国の規制では、太陽光発電設備は主に設計強度の基準を満たすかどうかで許可され、2024年4月の国のガイドラインで地元説明が「努力義務」とされたものの、同意なしでも建設可能とされてきました。
一方、南砺市の条例は住民同意を義務化し、禁止区域の設定や許可制度も導入するなど、国の規制より強い拘束力を持つ点が特徴です。
近隣自治体では、石川県金沢市がすでに2023年4月に再エネ設備に関する条例を施行しており、南砺市の動きは地域でも先進事例となります。
今後の影響と地域共生のあり方
南砺市内には、昨年10月時点で国が許可した太陽光発電設備が60カ所存在しており、平野部を中心に整備が進んでいます。
条例施行以降は、新たな設備建設に際し、住民との合意形成や自然環境への配慮が不可欠となり、事業者に地域共生の意識が求められるようになります。
国の努力義務では十分でなかった住民の権利保護と地域の調和に向け、自治体主導による制度整備のモデルケースとなる可能性が高まっています。
ネット上での反応と声
ネット上では、下記のような声があがっています。
・「再エネはいいが、安全性や地域との調和も大事」
・「住民説明の努力義務だけでは不安」
・「条例で住民の安心感が高まる」
といった前向きな評価が見受けられます。
一部では、
・「罰則額が5万円以下って軽くない?」
という指摘もあり、罰則の実効性をさらに高める必要性を議論する声も出ています。

まとめ
環境に優しい太陽光発電が地域トラブルにつながらないようにするには、自治体が安全や住民の合意を確保する枠組みを整えることが不可欠です。
南砺市の新条例はまさにその模範的な1歩といえます。
今後、このような条例が全国的に広がり、地域と調和した再生可能エネルギー社会の実現につながることが期待されます。
当記事は以上となります。
コメント